シークに罰せられて
その男性が振り向いた瞬間、シエナは凍りついた。
シーク・ハシム、かつての恋人。
シエナは顧客との打ち合わせのため、ホテルのスイートルームを訪れたのだった。
まさか彼が偽名を使って私を呼び寄せたなんて。
五年前、婚約寸前までいきながら、ハシムはシエナをけがれた女と決めつけ、彼女を捨てた。
あれ以来、私は無邪気な心を永遠に失ってしまったのだ……。
ハシムはいきなりシエナを抱き寄せると、嘲笑うかのように言った。
「君はいまだに僕を欲しがっている」結婚披露宴で、アラナは夫リースの友人とダンスを踊っていた。
すると、リースが嫉妬に満ちた視線を向けてきた。
結婚紹介所を通じて愛情抜きの結婚をしたアラナは、リースにとって、飾り物の妻でしかなかった。
二人が喜びとするのは、ベッドのなかでの行為だけ。
だがその夜交わした愛は、今までとは何かが違っていた。
もしかしたら、私たちの関係が変化し始めているの?それを確かめることはできなかった。
翌日、アラナは交通事故に遭い、夫の記憶を失ってしまったからだ。
マクシモスに捨てられてから半年がたつというのに、カサンドラはいまだ抜け殻のような生活を送っていた。
切ないほど彼を求めてしまう気持ちは、いつになったら消えるのだろう。
そんなある日、彼の仇敵であるエミリオが現れ、マクシモスの妹の結婚式に、恋人同士を装って出席しようと言ってきた。
カサンドラはさんざん悩んだすえ、マクシモスに会う唯一の手段であるその誘いに乗った。
最後にもう一度彼に会い、思いを断ち切るために。
数年ぶりに帰郷したレイチェルは、若く、幸せだった当時の自分に思いをはせた。
あのころはルーカスとの約束された未来を信じ、輝いていた。
だがそれも、彼女の兄の転落死で一変する。
ルーカスは町の人々に犯人扱いされ、彼女の前から姿を消したのだ。
今日で何もかも忘れよう。
私を待つ恋人はもういないのだから。
そう、誰もいないはずだ。
それなら、あれは幻?胸の痛くなるほど懐かしい声に、彼女は息をのんだ。
「やあ、レイチェル。
ここで君に会えるとは思わなかったよ」タバサは友人に頼みこまれ、新刊本の宣伝ツアーのため、作家と同行することになった。
本業は精神分析医であるアレックスは、なぜかタバサにつらく当たり、容易に心を開こうとしない。
著作からは想像もできない気むずかしさだ。
すばらしい家庭、充実した仕事──彼はいったい何が不満なの?タバサは思いきって、アレックスの妻にツアーに同行してもらうことを提案した。
そのとたん、彼の顔色が変わった。
「その必要はない!」あまりの剣幕に、タバサは言葉を失った。
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